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ラストワンマイルとは?各業界の課題と解決事例を解説

オンラインショッピングの興隆やライフスタイルの多様化によって、顧客はこれまで以上にモノ・サービスを好きな時間かつ適切な方法で手に入れることを求めています。宅配業者における働き手不足や人材の高齢化、労働環境の悪化が深刻になりつつある状況の中、増加する配送物に伴う不在時の対応や再配達などが大きな課題となっています。
このような物流センターから顧客の手元に届けるまでの最終接点である物流におけるラストワンマイルがよく課題として取り上げられますが、物流以外の業界においてもラストワンマイルの課題は存在しています。
本記事では、ラストワンマイルの概要から各業界での課題、解決事例までを解説します。


目次[非表示]

  1. 1.ラストワンマイルとは
  2. 2.ラストワンマイルに関する各業界での課題
    1. 2.1.交通
    2. 2.2.物流
    3. 2.3.機器設置
  3. 3.ラストワンマイルの解決事例
    1. 3.1.MaaS(交通)
    2. 3.2.MaaS(交通)
    3. 3.3.SaaS(機器設置)
  4. 4.まとめ



ラストワンマイルとは


ラストワンマイル(和訳:最後の1マイル)とは、三菱UFJリサーチ&コンサルティングによると「最終物流拠点からエンドユーザー(生活者)に物・サービスが到達する物流サービスにおける最後の接点のこと」であり、距離的な意味ではなく商品を届ける物流の最後の区間を意味する言葉です。
現在は主に物流・交通業界において多く用いられていますが、元々は通信業界で用いられていた言葉で「生活者や企業に対し、通信接続を提供する最後の区間」を意味していました。


出典:グロービス経営大学院『MBA用語集 ラストワンマイル



ラストワンマイルに関する各業界での課題

交通


交通業界においては、廃線等で公共交通機関による移動手段が限られている過疎地における移動手段の確保や高齢者の運転問題、都市部の渋滞削減等のヒトの移動における「ラストワンマイル」が課題となっています。
交通におけるラストワンマイルの解決手段として、MaaS(Mobility as a Service、モビリティ・アズ・ア・サービス:移動のサービス化)という概念があります。
日本においてもタクシーや自転車のシェアリングサービス、交通手段を一元化したアプリケーションなどが普及し始めており、これらが問題解決の糸口のみならず新たなビジネスチャンスとなりつつあります。


物流


物流業界においては、技術革新と共に倉庫管理や発送プロセスにおけるロボット等による自動化・効率化が以前から進められてきましたが、配送物をそれぞれの顧客に届ける最終接点であるラストワンマイルにおいては、いまだ人力に頼ってしまっていることが課題となっています。
物流業界のラストワンマイル問題に関しては、宅配ボックスの普及、コンビニエンスストアや駅などでの受取サービス、受取ロッカーの設置、配達ドローンの試み、そしてMaaS活用などが問題解決の糸口として期待されています。


機器設置


機器設置等を行う電気通信工事業界においても、交通や物流業界と同じく、労働人口減少による影響を受けやすい業界となります。仮想空間と現実空間を高度に融合し、人々が活き活きと活動できる社会である超スマート社会(Society5.0とも呼ばれる)の実現は、日本政府によって掲げられた目標ですが、社会的課題を解決することを可能にするこの超スマート社会の実現には、AIやロボット、IoTなどの技術を取り入れることが必要不可欠となります。


しかし、AIやロボット、IoTなどの技術を取り入れ、それらを活用できる状況にするためにはロボットやIoTデバイスをフィジカル空間に大量に取り付ける必要があります。ロボットやIoTデバイス等の各種メーカーは、技術・製品開発のプロフェッショナルであり、機器設置においてはノウハウを持ち合わせていないケースが多いです。超スマート社会の実現に向けて、実際にこれらの機器を設置するラストワンマイルを担うプレイヤーの存在が必要となります。つまり、交通や物流と同じように、機器設置においてもラストワンマイルが課題となっています。



ラストワンマイルの解決事例

MaaS(交通)


MaaSとは、情報通信技術(ICT)の発達を背景に生まれた次世代の移動サービスであり、地域住民や旅行者一人一人のトリップ単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービスであり、観光や医療等の目的地における交通以外のサービス等との連携により、移動の利便性向上や地域の課題解決にも資する重要な手段となるサービスのことです。


出典:国土交通省『MaaS とは


従来の交通サービス利用時は、利用者が道順を検索したうえで、鉄道、バス、タクシー、カーシェア、シェアサイクルなどの様々な交通手段の中から選択し、個別に予約を行い、料金を支払う必要がありました。
しかし、MaaSの登場により、交通手段の検索・予約・支払いをアプリ内で完了できるだけでなく、現地の観光案内、飲食店やホテルの予約・支払い、さらには病院や行政サービスなどの予約・支払いも一括して行うことが可能になってきています。


国土交通省によれば、将来の自動運転社会の実現を見据え、新たなモビリティサービスの社会実装を通じた移動課題の解決及び地域活性化を目指し、地域と企業の協働による意欲的な挑戦を促す新プロジェクト「スマートモビリティチャレンジ」を2019年4月に開始し、具体的なニーズやソリューションに関する情報共有を促すとともに、ベストプラクティスの抽出や横断的課題の整理等を行っていると言います。
2023年の取り組みとしては、以下のように全国各地でMaaSの実証実験が実施され、中には実際に事業化されているサービスもあると言います。


①神奈川県横須賀市、北海道札幌市・旭川市 Universal MaaS~誰もが移動をあきらめない世界へ~
概要:障がいや高齢など何らかの理由により移動を躊躇している方々へ向けた交通手段の一括サポート手配等を提供し、移動需要を喚起する。

出典:スマートモビリティチャレンジ『企業・地域の取組紹介

②奈良県川西町 「交通・健康・拠点」の共創によるウェルビーイング向上への挑戦
概要:主に高齢者の健康増進を目的としたデマンド型乗合タクシー等を提供し、行動や経済活動、身体機能・精神心理機能などの変化を目指す。

出典:スマートモビリティチャレンジ『企業・地域の取組紹介


このようにMaaSは、ラストワンマイルの解決のみならず、住む人、働く人、関わるすべての人のウェルビーイングの実現に効果的であると言えます。



MaaS(交通)


MaaSは、交通のみならず物流業界の課題解決にも効果的です。
MaaS導入・活用により、物流業者と交通業者間でデータを共有すれば、交通渋滞を避けた最適なルートでのスムーズな輸配送のみならず、配送のマッチングサービス等の展開も可能となります。輸配送業務が効率化されることにより、宅配業者における働き手不足の解消や労働環境の改善が期待できると考えられます。


そもそも物流業界は、各社の物流部門でのIT投資の優先順位が低かったり、改革をしようというマインドが起こりにくく、DX(デジタルトランスフォメーション)から遠い業界でありました。多くの運送会社の売上は約5~50億円程度で、営業利益はその数%程度であり、IT投資への余力がなかったり、自社内業務を限られた範囲でIT化する程度でとどまっていました。つまり、荷主や倉庫なども含めた関係先とのシステム統合や標準化を実現するまでに至っていません。


このような物流業界に対して強い課題感を持った人々が集まるラクスル株式会社が、物流MaaSであるハコベルを開発し、産業構造を変えようとしていることが事例として挙げられます。
ハコベルは、仕事を受けたいドライバーと荷物を運びたいユーザーを最適にマッチングさせ、荷物の配送予約から支払いまでワンストップで行えるネット運送・配送サービスであり、運送会社の非稼動時間を有効活用し、ユーザーに早く安く安全に輸配送サービスを提供できる仕組みを実現しています。


出典:ラクスル『3分でわかるハコベル事業


このように物流MaaSは、物流業界の課題であるラストワンマイルの打開に効果的であると言えます。



SaaS(機器設置)


MaaSは、交通ならびに物流業界の課題解決に効果的でしたが、機器設置に特化したSaaSも存在しています。
機器設置に特化したSaaS導入・活用により、メーカーや機器設置業者、そしてクライアント間でデータを共有すれば、機器設置における各種デバイス管理やスムーズな施工管理も可能となります。
そもそも機器設置を行う電気通信工事業界も、上記の物流業界と同じくIT投資の優先順位が低かったり、改革をしようというマインドが起こりにくく、DX(デジタルトランスフォメーション)から遠い業界でありました。

このような機器設置を行う電気通信工事業界の課題に対し、ベイシス株式会社は機器設置に特化したSaaSであるBLASを開発し、産業構造のアップデートをしようとしています。


BLASは、スマートフォンやPCを用いて、現場からでも作業進捗や写真データなどの登録・更新・管理などが可能な現場に寄り添ったシステムであり、すべての情報はBLASに蓄積され、リアルタイムで情報を確認できるSaaSとなります。機器の取り付け間違いなども作業者が現場を離れる前にチェックすることができ、無駄な手戻りも防げます。
また画像認識AIやRPAの併用などにより、
・シリアルナンバーの突き合せ
・計量メーター指針値の事後確認
などの省人化も可能で、生産性向上に繋がります。


出典:ベイシス『スマセッチ


このように機器設置に特化したSaaSは、超スマート社会を実現するために必要な機器設置のラストワンマイルの打開に効果的であると言えます。



まとめ


日本は少子高齢化がますます進行し、少ない労働人口で社会的なインフラの安定的な構築・運用を行う必要があります。そのためには、今後IoT等を活用してリアルタイムの情報も取り込み、それらのデータを分析・活用することで交通・物流・機器設置におけるラストワンマイルの解決をいち早く実現することが重要となります。
「ラストワンマイルの課題解決となるスマートインフラの構築に興味がある」「コストを抑えて超スマート社会を実現するための機器設置等を実施したい」とお考えなら、設置から保守まで対応している専門会社に依頼してはいかがでしょうか。


『スマセッチ』は、IoT機器の取付け工事から、運用監視までのすべてを一貫して依頼できるスマートインフラ構築プラットフォームです。全国どこでも対応可能なほか、パートナー企業の管理や現場の工程管理をクラウドで行うため、よりスマートな施工管理が可能です。
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