橋梁モニタリングサービスの導入メリットと今後のビジネス展開
日本は四方を海に囲まれた多雨・多湿な気候です。毎年台風が襲来するほか、地震が発生することも多いため、橋梁の損傷や劣化を招きやすいという特徴があります。
長く安全に橋梁を利用するためには、定期的な点検と損傷の早期発見が不可欠です。損傷が軽微なうちに対策しなければ大規模な修繕が必要となり、橋梁の寿命を短くしてしまいます。
また、橋梁の損傷を放置していると落橋といった大事故につながりかねません。人命の危険があるばかりか、インフラが分断されれば経済的な損失にもなります。
この問題を解決する手段として注目されているのが、IoT技術を活用した橋梁モニタリングサービスです。本記事では、橋梁モニタリングサービスの基本概要、導入メリットや今後のビジネス展開について解説します。
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橋梁の工事規模と課題
国土交通省の『道路構造物のメンテナンスの現状』によると、2015年12月時点で橋梁の数は約73万橋、そのうち約70%を市町村が管理、残りの30%を都道府県・政令市等、国土交通省、高速道路会社が管理しています。
工事規模は公共工事の有無に左右されることが多く、年度ごとに変動もあります。また、『建設工事受注動態統計調査報告』によると、2017年以降の橋梁・高架構造物工事は右肩上がりで推移しています。
- 2017年:1兆3億3,968万6,000円
- 2018年:1兆4億7,199万8,000円
- 2019年:1兆5億3,263万4,000円
出典:国土交通省『道路構造物のメンテナンスの現状』/政府統計の総合窓口(e-Stat)『建設工事受注動態統計調査確報 2017年度 記者発表資料』『建設工事受注動態統計調査確報 2018年度 記者発表資料』『建設工事受注動態統計調査確報 2019年度 記者発表資料』
橋梁の老朽化が課題に
しかし、すでに建設されている橋梁の老朽化は修繕工事にかかわらず、常に大きな課題として挙げられています。
国土交通省が発表した『老朽化対策の取組み』によると、2019年3月時点の橋梁のうち、建設後50年を超える橋梁の割合は27%、2029年時点には52%になると推計されています。
現在、すべての橋梁・トンネルなどは、近接目視による点検が5年ごとに実施されています。2018年度に完了した点検結果『橋梁等の平成30年度点検結果をとりまとめ 』では、構造物の機能に支障が生じる可能性があり、早期に措置を講じる必要がある状態の橋梁は全橋梁の10%、約68,400橋に及びます。
さらに、すでに支障が生じている、もしくは生じる可能性が著しく高く、緊急に措置を講じる必要がある橋梁が0.1%、約700橋が危険にさらされていることが分かっています。これらの橋梁のうち、修繕に着手した割合は国土交通省が管理する橋梁で53%、地方公共団体では20%となかなか進んでいません。
市場は拡大基調にあるものの、適切な長寿命化施策も行われていないというのが橋梁を取巻く現状です。
出典:国土交通省『老朽化対策の取組み』/『橋梁等の平成30年度点検結果をとりまとめ 』
リモートモニタリングサービスの概要と導入メリット
こうした老朽化対策のニーズを満たす方法としてリモートモニタリングサービスに期待が寄せられています。橋梁のリモートモニタリングとは、対象の橋梁に以下のようなIoTセンサを設置し、橋梁の状態を計測する仕組みです。
▼橋梁に設置するIoTセンサの例
- 加速度センサ
- ひずみセンサ
- 腐食センサ
- 傾斜センサ
- 変位センサ
これらのセンサが収集データを通信網を使用してモニタリングします。また、橋梁のリモートモニタリングには、以下のようなメリットがあります。
▼リモートモニタリングのメリット
- 損傷の早期発見
- 修繕費用の抑制
- 補修作業の効率化・省力化
IoTセンサを活用することで、橋梁のひずみや劣化、腐食などの状況をデータとして収集できます。事前に設定した数値を超過した場合に管理者に通報するように設定すれば、早期発見が可能です。
また、IoTセンサによるモニタリングなら調査する職員のスキルによるバラつきがなくなります。損傷箇所を特定するために足場を組んだり、解体したりといった作業が不要になります。
さらに、日々蓄積していくストックデータを活用すれば、劣化の激しい橋梁だけをピックアップして補修の優先度を分別できるため、効率的な補修作業も可能です。
リモートモニタリングサービスの導入効果
橋梁の点検・診断にリモートモニタリングサービスを導入前と導入後を比較すると、大きく分けて以下の違いがあります。
導入前 |
導入後 |
|
点検方法 |
作業員が実地の橋梁で点検する |
データを自動で収集する |
要件把握 |
事前に損傷の程度を区別できない |
事前に損傷の程度を区別できる |
従来の点検・診断の場合は作業員が現地に赴き、目視で行います。しかし、モニタリングサービスを活用すれば遠隔でデータを収集できるため、わざわざ橋梁へ点検に行く必要がありません。
また、損傷箇所の特定や程度の把握もすべて人の目で行われます。複数の作業員がローラー作戦で行うため、効率性が低くミスが発生するリスクもあります。一方、モニタリングサービスを活用すれば、データで損傷度合いを把握できます。効率よく正確な点検・診断を行うことが可能です。
橋梁モニタリングサービスの今後のビジネス展開
橋梁の架け替えは公共工事のなかでも大規模な工事です。そのため、橋梁のライフサイクルコストの縮減に向け、予防保全の必要性の高まりが見られています。
また、最近では5Gを活用したモニタリング・解析、ドローンを活用した点検や保守サービスの提供など、今後の受注増加を期待したさまざまなビジネス展開が始まっています。
IoT機器を駆使した橋梁モニタリングサービスは、フラットで無駄のない修繕を実現するサービスです。将来的なニーズの高まりに伴い、さらに活用の幅が広がることが予想されます。
まとめ
橋梁を長く、そして安全に利用するためには点検・管理・補修は不可欠です。橋梁モニタリングサービスを活用すれば、遠隔管理が可能になり、損傷が軽微なうちに発見できます。橋梁の状態を細かく管理することで橋梁自体の寿命を伸ばし、総合的なコストを削減します。
また、橋梁モニタリングサービスは定期点検時における負担の削減や効率化に役立ちます。目視で行う点検業務をセンサで収集したデータの変化から推察することで、業務効率化や省人化が可能です。今後さらに如実になる橋梁の老朽化対策にとって、メリットが多いサービスといえます。
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